純喫茶を引き継ぎたい〜インターン〜【沼津でやりたい100のこと】

沼津市新仲見世商店街に入ってすぐ、レトロな看板が目に入った。ここは、純喫茶「ケルン」。店に入ると、寒さを忘れるようなあたたかな温度と雰囲気に包まれた。ケトルの乗った懐かしいストーブが、二つも常備されている。

現在、沼津市で起業したい人達の為に、沼津市内の7件のお店でインターンを実施しており、今回伺ったのがその一店の純喫茶「ケルン」。インターンに来たのは、東京都出身の福田文さん(会社員・42)だ。

祖父母の家が沼津市にあったということもあり、幼少期には春、夏、冬休みのほとんどを沼津市で過ごしていたという。仲見世商店街やアーケード名店街には、小さい頃から買い物に来ていたそうだ。

福田さんは、純喫茶巡りが趣味で、国内外を問わず年100件程巡って来たそう。「1日かけて3件くらい廻るから。」と謙遜していたが、本当に、純粋に純喫茶が好きなのだと思わせる。「チェーン店と違い、コーヒーの味一つとっても、カップ一つとっても、個性がある。インデペンデントな個人店が好き」ケルンの居心地の良さもあり、福田さんはリラックスした表情で語る。

福田さんはインターン前に食事を摂ることに。「お客さんに高齢者が多いから、ちょっとご飯を柔らかめにしてます。ごめんね。」と、ここで60年以上勤めている望月よし江さん(86)。そんな細やかな優しさにも、あたたかさがある。ケルンの2階が住まいだった望月さんが今年3月で引っ越ししてしまい、藤原さんが一人で切り盛りすることになる為、近々店をしまおうかと考えているところらしい。

福田さんは、いつか純喫茶で働くことが夢だそう。「全国的に、繁盛していても経営者が高齢の為、閉店してしまうことが多く、私一人で一軒継いでも、そしたらその他の店が助からない。なにか助けになったら。ネットワークが作れたら。好きだからといって、やみくもに始める気はないので、インターンで学んで、いずれやってみたい。」本格的なお仕事体験は、3月10日に行われる。

その後、配膳や片付けを体験したので、ますます愛着が湧いたそうだ。「声をかけられたくない若者も増える中、常連さんの顔を覚えてくれてるケルンは、地域のサロン的な存在で、2人がいるから来るお客さんも多いように感じた。改めてこういったお店を残すために自分にできることを考えるキッカケになった。もしここを継ぐなら、中もメニューも変えずに、Wifi設備など、新しいお客さんが来てくれるような工夫が必要だと感じた。現在は都内で開催される純喫茶好きのイベントを、常連さんにも受け入れてもらえるような形でできたら。ロンドンで家庭の庭園を年に一度開放する習慣があるように、商店街や普段、入らないような古い邸宅を自由に見れる日を作ってもいいかもしれない。」という。

ケルンの魅力については、「作られたレトロではなく、本物のレトロが好き。ケルンは時が止まっていて、80年間続けていないとできない、おばあちゃんちのような落ち着きがある。」と語った。

また、店主の藤原美恵子さん(80)は、「若い人が配膳とか接客とか手伝ってくれるのもいいもんだねぇ」と話した。「これ、お父さんがやってただよねぇ。だから、元々出来てたものを継いだだけだから、もうやめようかと思って。」

沼津市内にはこういった貫禄あるレトロなお店が多く、後継者がいない為辞めてしまうケースも多いという。ファンとしてはとても寂しい言葉だが、少しでも続けていただけたらと思う。

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