川と海の境目を目指して/2時間のSUP旅

10月31日、 Retreat in the city 、2回目のモデルツアーが行われた。

風のテラスを、狩野川上流域と下流域をつなぐ拠点にしたいという意見から、前回は柿田川河口から風のテラスまでの川を下るツアー。
今回は風のテラスから御用邸を目指すコースだ。


水辺をアテンドをして頂いたのは今回も30年間、狩野川で活動する「カヤックタパ自然学校代表」のタパさんさんこと上野さん。
上野さんはこのコースの開催は2年ぶり。
どんな可能性があって課題があるか、検証してみた。

川沿いの蒸留所「THE CHAMBER」でコーヒーを飲みながら、ほかの参加者の到着を待つ。

空と遠い山々の青いグラデーションがうつくしい。

川の向こうに見える香貫山はまだ紅葉が始まっていない。
川と街のその挟間の景色を眺めながら、静かに深呼吸をした。
心地よい風が吹いて「今日はいい日になる」そんなことを予感させた。


コーヒーを飲み終え、「THE CHAMBER」の前の河川敷で準備をする。

10:00 海を目指していざ出発

この日の風速は5メートル。
体感としてはそよ風程度、川はとても穏やか。


教わった通りにパドルを漕いで水面を進む。
ボードはとても安定しているので、コツを掴めば立ち上がるのもそれほど難しくはない。
体幹をつかって膝を曲げたり伸ばしたり。パドルを左右に操りながらゆるやかなペースで進む。

程なくして御成橋の下を通過。鉄橋の下を川からのアングルで眺められるというのもなかなかいい。

ふと振り返ると、街並みを映しだす川面の先に富士山が見えた!
前日の夜少し冷えたからか雪がうすく積もっている。
川と空と街とそして富士山とが、ひとつの風景の中にある。

この豊かな川は、沼津の街なかをすり抜けるように流れる。

スーパーマーケットの厨房から漂ってくるのか、お惣菜を作る油の匂いや、さば節工場から香ばしい燻製の匂いなんかがほのかに香ってくる。
先ほどまで自分たちがいた街は、香りが届くくらいすぐそこにあるのに、普段とは反対の川側から見上げているというだけで、全く違った場所のように感じられる。

10:30 港大橋下を通過

左手に江川ひ門の水門をみる頃には風の香りが変化した。
川と海の境にある我入道のエリアには船が何艘も停められている。
程なくして我入道の渡し船の乗り場を通過。
右手にはびゅうおや水産加工の工場が多く立ち並ぶ。
海は、もうすぐ。

この辺りの水深は1.5メートルくらい。
パドルを漕ぐ手を止めて水の中を覗くと川底まで見える。
丸々と太った鯉が何折もボードの下を行き交う。左手の小高い丘の上には八幡神社の祠が見える。

風を読んで、タパさんが「左岸をいきましょう」と声をかけてくれる。
川の真ん中は風が強く、端は風が弱いそうだ。
海に近づくにつれ“風速5メートル”が心地よさからドキドキに変化していく。

海に出る前に左岸に寄って休憩をして一呼吸。

タパさんから

「海を見て。白波が立っているでしょう」

右手の少し先に見える海には確かに白い三角が無数に見えた。

「ここからは座って行った方がいいかもしれないね。大きく右回りに、テトラポットに近づき過ぎないで通過しよう」。
豊富な経験から適切な見立てをしてくれるプロが一緒というのは、本当にありがたい。

11:00いざ海へ

川と海の境目は、磯の香り、目の前の視野が広がる感覚が教えてくれる。

いよいよ我入道浜町の河口から海へ漕ぎ出した。
そしてタパさんが言っていた意味を私たちはすぐに理解することになった。

海はそれまで下ってきた川とは全く違っていた。

ザブンザブンとボートを揺らして、全力で漕いでも漕いでもなかなか進まない。

一寸法師状態に若干怯むも、陸で教わったことを思い出してひたすらにパドルを漕ぎ岸を目指した。
まさに必死に。

11:30 圧倒的充足感で上陸!

本来の目的地は牛臥海岸だったが、波と風の状況から安全を考慮し予定の目的地は断念。
手前の我入道海岸から上陸することになった。

上腕二頭筋と太ももあたりに心地よい疲労。
そしてなんとも言えない清々しさ。
目的のゴールに辿り着かなくても、やり切った!という圧倒的な充足感もあった。

11:50 市営バス停

街へ戻るためバス停に向かう。
海岸から松林を抜け路地へ。
SUPでゴールしたものの旅的なテンションは下がらない。

対岸の沼津港は観光客で賑わっているが、我入道は静かな時間。
空気感がなんだか沖縄やギリシャの島のよう。

浜辺から5分ほどで、東海バスの”浜町停留所”に到着。

沼津駅に向かうバスは1時間に1本か2本。
バスを待ちながら近所のおばちゃんとおしゃべりをしながら、漁師町の時間を愉しむ。


11:57 浜町停留所発沼津駅へ

我入道の狭い路地を路線バスは進む。
ギリギリの幅でゆっくりと右折左折をするのを静かに「わぁーー」と声を漏らしてしまい小さく驚きながらドキドキな旅気分はまだ続く。

先ほど、漕いだ川を橋の上から眺める。
いつも見ている風景だが、1時間前の小さな冒険を思い出し、つい写真を撮ってしまう。
そして冒険の物語を語り合う。

12:15 デイトリップのおわり

上土停留所で下車。街に戻ってきた。

9時過ぎに手ぶらで川辺に集合して川辺での時間を楽しみ、ランチどきには元の場所に戻ってこられる。
街から川、そして海へ。それは短時間に凝縮された豊かな時間。川から眺める日常は、新しい発見に満ちた非日常だった。

別の季節や時間帯でも試してみたい。
そんな気持ちにさせる経験だった。

沼津はまだまだ可能性がある。
なんとも不思議な街だ。

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