沼津蒸留所 始動!

2020年9月29日13時30分、沼津蒸留所が酒造免許を国税局から取得し、ジン製造をスタートすることになった。


狩野川を望む絶好のロケーションに佇むひとつの元民家

昭和43年に建てられたこの家は、10年ほど前まで住居として使用されていた。
2017年、家主の濱野弘雄さんの「地域のために活用してくれるのなら」という思いから、リノベーションスクール@沼津の対象物件となり、参加者による不動産再生事業計画が練られ、暫定利用をしながら沼津らしい使い方を模索してきた。

2019年7月の暫定利用の『川の家 hamanotei』の風景

そして2020年秋、クラフトジン工場「Numazu Distillery 沼津蒸留所」として本格始動する。

運営元は株式会社FLAVOUR
代表の小笹智靖さんは「蓋を開ければ沼津の香り。その沼津の香りを遠くまで届けたい」と話す。

大学進学で沼津を離れ、横浜のデザイン事務所に勤務していた小笹さんは、30歳を機に地元沼津に戻り、「Bar&Grill SASA」をオープンした。

「SASA」の常連客である家具職人の永田暢彦さんは横浜生まれ横浜育ち。父親の仕事の関係で3年ほどニューヨークで暮らしていたこともある。帰国後、大学・大学院で建築を学び、沼津市の建設会社に入社。独立を考えていたところ、リノベーションスクール@沼津に出会い、その縁で沼津に移住。2017年「やまぶき工藝社」を立ち上げた。

リノベーションスクールで狩野川沿いの空き物件の存在を知っていた永田さん。

「あそこで何かできないですかね?」と小笹さんに話したことがきっかけで、2人はジン造りの道を模索し始める。

「小笹さんが『お酒造りしたいな』と言っていたのを覚えていた。『一緒にやりませんか?』と僕が小笹さんに声をかけた」と永田さんは話す。
2018年11月の出来事だ。

そこからが苦難の始まりだった。

酒造免許取得のハードルは、想像以上に高いものだった。

資金・技術・知識、この3つをクリアしなくてはいけないことが分かった。

小笹さんと永田さんはひとつずつ着実にクリアしていった。株式会社を興して銀行融資を受け、資金面をクリア。

技術面では、小笹さんが宮崎県の芋焼酎メーカーで住み込み修行、永田さんは滋賀県で酒造りの研修を受けた。
沼津駅前のビール工場「Repubrew」代表の畑翔麻さんも株式会社FLAVORの社員に迎えることにした。

知識面では、法律を学び、一つ一つ地道にクリアしていくことになった。

2019年12月から建物の準備を始める。

そして2020年7月初旬、待望の蒸留器が沼津蒸留所に設置された。

タンクの容量は300リットル 1回当たりに沸かせる量は150リットル程度。

ジンの製造・販売では最小クラスだという。

沼津蒸留所のサイズに合わせて福岡のメーカーに特注、冷却塔は通常は縦型だが、蛇口を付けるため横型でオーダーした。
製造元もこういう形を作ったのは初めてだという。


ジンの定義は、穀物類が原料のお酒をベースに、ジュニパーベリーとハーブ(ボタニカル)などで香り付けされていること。

小笹さんは「沼津には戸田の橘や、西浦のレモン、寿太郎みかんなどジンに使える素材が数多くある。いっぱい沼津のものを詰め込んで、沼津のジンを日本中に届けたい」という。

まんが日本昔ばなしで1977年に放送された、西浦木負の昔話「仙人みかん」にちなんで「LAZY MASTER」という仙人をモチーフにしたロゴも制作。

カウンター席からはジン工場が見える小窓もある。

「メカが見えると男の子はワクワクするから」と小笹さん。

オープン前、オーナーさんにこれからの建物の使い方を披露した。

家主の濱野弘雄さんは「川が望めるこの絶好の場所を、街のために使ってほしいと願っていた。」駐車場にしないかと提案があったこともあるが「もってのほか」と反対したという。

「嬉しいなあ、ここを利用してくれて。綺麗になって」生まれ変わった濱野邸を見て感慨深げに話す濱野さん。

「若い彼らのアイデアは面白い。応援していきたい」と優しい笑顔を見せた。

もともとうなぎ店のうなぎの洗い場として、井戸が掘られている濱野邸。

昭和58年撮影の整備のために役所に提出した写真

かつての1階部分は河川敷整備で埋め立てられ、2階部分が、現在の建物になっている。

その井戸水が、今度は沼津蒸留所のジン造りに活用される。

「県外からも人がたくさん集まる場所になるといい。椅子やテーブルを外にも置いて、BARスペースも扉を全開放する。とても気持ちいい空間」と小笹さん。

「困ったなぁ、毎日寄っちゃうかもしれないなぁ」嬉しさが溢れ出る濱野さん。

そして、お父さんの笑顔を嬉しそうに横で確かめる息子さん。


新しい使い方をする人、応援する人、支える人。
建物はそんな人の想いでつくられ、時と共に文化を築き、そして時代と共に朽ちていくか、変化しながら時代にあった価値をまたつくりだす存在になっていく。


狩野川沿いの新たなスポット、沼津蒸留所。
ここから沼津の様々な香りと新しい文化がまた生まれていきそうだ。




=================

隣接するカフェ&バースペース「THE CHAMBER OF SPIRIT AND TIME」で味わうことができる。

モーニング     7:00〜9:00 (月〜金)
ランチ          11:00〜14:00(月〜金)
カフェ&バー  17:00〜21:00(月〜土)

おすすめ記事