NUMAZU OPEN AIR PROJECT〜これからの、新しい可能性〜


2020年初頭から猛威をふるい始めた新型コロナウィルス。 沼津でも都心部と変わらない外出自粛要請でイベントの延期・中止に。この3月・4月は沼津市民にとっても我慢の期間だった。

新しい日常ってなんだろう?

5月23日、沼津駅から徒歩7分の新仲見世商店街と上土界隈のエリアで街の可能性を試すひとつの実証実験が行われ、これからのきっかけになる風景が広がっていた。

「NUMAZU OPEN AIR NIGHT」として企画されたこの取り組み。

実行委員長の田辺美穂さんにお話を伺った。

「今年の2月に沼津のリノベーションスクールに参加し、そのプログラムが終わった後も同じユニットの仲間と新しい価値観のマーケットを形にする為に、意見を出し合って考えていた中、自粛が発表されました。第一段階の緩和の兆しが見えたとは言え、まだ室内の密な状態で飲食をするのは少し怖い印象を持つ方も多くお店に行けないという声を多く聞きました。密を防ぐ為に飲食店の座席を店舗外まで広げ、安心して飲食を楽しんで頂き、かつ、それが沼津の新しいスタンダードになったら素敵な街並みが見られるのではないかと考え、社会実験として実施しました。」

市民主体で公共空間の活用を模索し行動すること。

この新しい生活様式に合わせた実証実験は、行政や商店街主導ではなく、数人の志をもったメンバーで開始された。

5月6日にアイディアが提案され、話し合いの結果、わずか2週間程度で店舗や行政、警察、そして地元住民の理解を得る作業を行った。タイトな時間の中、メンバーたちは懸命に街を走り回った。

今回の企画に協力した「やきとり、おでん。八六家〜hachirokuya〜」の店主である加藤公康さんは、今回の取り組みについて

「継続するような企画になれば」と話す加藤さん

「どこの飲食店も利用客が激減していて、今回の活動はとても歓迎して受け入れた。沼津を良くしよう、という思いは一緒で企画を継続して応援していきたい。自身はこの企画を聞いたときに、賛同の声をあげた」

準備期間中に田辺さんが気配りしたのは「イベントではなく、新しい街の日常をつくるための実証実験」という部分。

「先が見えないなか、何が正しいのか?実際、お店のみなさんの意見を汲み取る作業が不足して指摘を頂いたりもしました」

田辺さんや実行員のメンバーは社会実験とイベントの解釈を何度もわかりやすく協力者のみなさんに伝えた。 
コトを起こすと、イベントをすると捉えられてしまいがちだが、できるだけイベント色やイベント的なモチベーションになる要素を削りながら準備を進めた。

<<実証実験本番、そのときの様子は・・・?>>

5月23日、夕闇が迫った街の路地で、その実験は多くの人の気持ちを乗せて、始まった。

今回の企画は一部の新聞、そして店舗のクチコミのみでしか告知されていなかった。

会場となる新仲見世商店街や沼津銀座の飲食店のおよそ10店舗は、お店の椅子やテーブルを外に置き、来店客を出迎える用意ができていた。

開始時刻となると路地には関係者以外の人々も集まりはじめた。寿司屋には馴染みの常連客がビールを楽しみ、バーでは若者たちが久々の仲間たちとの再会を楽しんでいる。「今までの日常」よりも多彩な「新しい日常」の光景が、そこには広がっていた。

ある参加者に感想を尋ねた。

「今までの自粛期間で外で飲食ができなかったせいか、今日の外で飲食するのは、とても楽しい。仲間たちとも一緒に談笑できるのが、どれだけ楽しいことか今になって再認識をした」

と、ともに

「テレビなどの報道を見ていると、いかにコロナウィルスが怖いか知らされる。まだワクチンや特効薬が完成しない分、どれだけ警戒していいかわからない。この飲食スタイルも、自身でどう判断していいか、正直わからない」

正直な不安も見せた。

実証実験は、3箇所の沼津市道の占有許可と静岡県警からの使用許可を申請し行われた。
道路の封鎖にはボランティアスタッフの活躍もあった。

ボランティアスタッフは
「商店街を行き交う人が何をしているのか、不思議そうに覗いて自分に質問することが多かった。今回の実験趣旨と目標について話すと、多くの人が理解を示してくれた。応援する人もいるほどだった」とも。

社会実験を行ったスタッフたち

イベントは終了予定時刻の21時00分にはテーブルや椅子が撤収され、元の姿に。普段ある沼津の夜へと戻っていった。

実証実験はこうして次回を望む声と共に静かに終了した。

後日、わたしたちはその後のことについてインタビューを行った。

まず今回の実証実験に店舗として参加したBAR AND GRILL SASA 小笹智靖さんは、こうコメントした。

「座席との空間を作るのは、小さい店舗にとってとてもむずかしい。とくに自身の店のようにカウンターだけだと、多くの来店が望めない。

今回の実証実験は小さな店でも路地を使うことによって、店舗の収益にもつながり、たいへんありがたいことだ。また実証実験以外にも、今回の外テーブルを置くことによって小さな店でのスタイルや店の雰囲気を感じることができ、敷居が高かった店でも、入りやすく交流することができた。この近隣のエリアは小規模で常連に愛される店が多い。多くの人に知ってもらうことも、この実験のメリットだったのではないか」と分析する。

また、商店街としての考え方はどうだろうか。

新仲見世商店街の井草雅彦会長にお話を伺った。

「新仲見世商店街はアーケードの取り外しを6月22日から行うことになった。今後商店街はどのような機能が求められるのか、新しい商店街のスタイルについて考えている。単なる店舗の集合体・通路としての商店街ではなく、商店街を「公園」として捉える、新しい公共空間を考えている。

今回の取り組みは決して一過性の単発イベントでなく、新仲見世商店街で行われた「NEO商店街」や、上土商店街で続いている「沼津ナイトマーケット」の運営実績の上になり立っていると思う。突発的なイベントとして捉えると商店、住人、行政との協議に時間が掛かってしまうが、その理解の素地があって、今回の実験があると思う。

今後も商店街の役割として、行動する人を支える場所として、ともに成長していければ」と笑顔を見せた。

6月5日、国土交通省は飲食店等を支援する緊急措置として、地方公共団体と地域住民が一体となって路上利用の占用許可基準を緩和する事を発表した。

そして地方公共団体に同様に取り組むよう要請をしている。

全国で始まる路上利用。
この空間の新しい使い方は、行政が決めるのではなく、様々な立場の利用者が安全に、そして使いやすいように市民がルールを決め、イベントではないこれからの時代にあった各地域それぞれの運営の仕方もきっと大切になるだろう。

6月13日、NUMAZU OPEN AIR NIGHTの2回目が新仲見世商店街で行われた。

今後は、NUMAZU OPEN AIR PROJECTとしてエリアの可能性を試すために、道路や河川敷と場所を変えながら定期的に開催していく予定だ。

新しい生活様式に求められる、新しい店舗のあり方、新しい公共空間のあり方、新しいコミュニケーションのあり方、その定義がまたひとつ変わろうとしている。


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