40年前から続く心地よさ~梅邑Bar~
沼津銀座に店を構えて40年以上、知る人ぞ知る名店といえばバー梅邑(うめむら)であった。
まさに隠れ家といった入り口を開けると2階に続く階段、2階に上がるとやや暗めの照明にバーカウンター、テーブル席も2つ、こじんまりとしたなかにどこか歴史の重みを感じさせた。
マスターは沼津市内のバーのなかでも2022年時に最高齢となる山城節夫さん。
沼津の街を長年見続けてきた山城さん、その佇まいやゆっくりとした口調に安心感を覚えた。
“沼津のバーはそれぞれ個性を持ってやっているから面白い。みんな人生観を持ってるんです”
山城さんは東京出身、人ごみが苦手だったから知り合いのいた沼津に引っ越してきた。
店をオープンしてからは上土商店街の人々がよく利用したそうだ。
“当時はどんちゃん騒ぎです(笑)上土の人はやっぱり情があるよね。僕みたいなよそから来た人間にも優しくしてくれましたよ”
思い出話についつい引き込まれ、お酒も進む。ゆっくりと進む時間を山城さんと二人で過ごす。
お客さんのなかには男女問わずひとりで飲みに来る方も多かった。
その目当ては山城さんとの会話。飾らない山城さんの人柄に惹かれ通い始める常連さんも多かった。
“僕より年上のお客さんは来ないですからね(笑)みんな相談事があるから聞いてあげるんです”
店内には年代物のボトル、ブラウン管のテレビ、昔懐かしいダイヤル式電話機は令和の時代も使われていた。
レコードプレーヤーには映画音楽やビートルズのアナログレコード、心地よく柔らかい音が店内を包み込む。
ここには40年間変わることなく全てのものに山城さんの人生観が詰まっていた。
“いまあるものを使い続ける価値観というのかな。便利なものほどリスクが大きいんですよ。だから、昔のものを使い続けているんです”
山城さんの人生が梅邑というスタイルのバーを作り出し、居心地の良さになる。
決して気取らず、自分の飲みたいものを飲めばいいと山城さんは言っていた。
山城さん、人生を彩る時間、あの空間、あの空気をありがとうございました。
【2022年10月9日情報更新】
≪梅邑BAR≫
沼津市上土町50
2022年9月27日より休業