潜る海、地上の海
大瀬崎は数知れたダイビングスポットである。
沼津の街中から車で約45分でその場所へ行ける。
沼津駅からは直通バスが1日2便、朝・夕と出発をする。
初めての方も気軽に日帰りでダイビングを体験できる。
そこで初めてダイビングする方々に同行してみた。
インストラクターの方にウエットスーツの着方から指導を受ける。
丁寧に機材の説明をうけ、実際にボンベを担ぐ。
約15kg。歩くのも一苦労だが水に入ってしまえばたちまち軽くなる。
水の中で呼吸の仕方などを教わる。
ゴーグルに水が入ってしまったときがとても大変で悪戦苦闘。
一通りの動作にOKが出たところで実際に海へ入る。
インストラクターと手をつなぎながら行くので安心だ。
ちょっとお邪魔しますと、海の世界へ入っていく。
天候は曇りだったが
たくさんの魚たちが群れを成して泳いでいるのを見ることができた。
鯛やアジ、カラフルな魚、そしてウツボも口を大きく開き出迎えてくれた。
イカの大群は美しく、何時間でも見ていられそうだ。
水中8mまで潜り天井を見上げる。
ほかの人の吐く息が水泡を作り、太陽の光と絡まりなんとも言えない美しい世界を作り出していた。
さっきまでの不安は嘘のように消え
まるでおとぎ話のような空間に浸り、自分が水中で息をしていることを忘れる。
地上では目にすることのない世界がそこには広がっている。
だが地上の世界の風景も捨てたもんではない。
時折顔を覗かせる富士山。
海の中から見る富士山とはなんて贅沢なんだろう。
と思いながら右に目をやるを今度は沼津の市街地が見える。
自分たちの住んでいるところを客観的に眺める。
なんとも不思議な気分だ。
この大瀬崎。
実は水質検査日本一に2年連続で選ばれている。
このきれいな海は生まれ持った素質を持っているのだ。
北西の風が吹けば大瀬崎湾は荒れるが、外海は荒れていない。
逆に吹けば外海は荒れているが、大瀬崎湾は荒れていない。
大瀬の海は特別なことがない限りはいつでも楽しめる。
これがダイビングのメッカとなる一つの要因だという。
今回体験ダイビングでもお世話になったダイビングサービスをしているフジミの髙野さんにお話を伺った。
ダイビングが盛んになったり、水質が良いことが世間に広がる中で
このポテンシャルで30年前は40万人の観光客が来ていた。
沼津と大瀬をつなぐ船も出ていたそうだ。
ダイビング客が増えることによって
漁協とのトラブルもあったそうだ。
しかし、ダイビング界の重鎮たちも巻き込んで話し合いを繰り返し、
資源を取らないことや、カリキュラムの提示などの安全確保、潜水可能時間などを決め
両方にとっていい形が出来上がり、協定を結ぶことができた。
そして忘れてはならないのが
ここにあるダイビングサービスのこと。
ダイビングショップとはちがい現地でのサポートをする。
髙野さんのお父さんが約50年前に民宿として始めた。
生まれた時からここがあり、週末には自動的に大瀬に行っていた。
それから大人になり、今では後をついでフジミを切り盛りしている。
どんな役割なんですか?という問いに
「宿のおやじといった感じです。」
という髙野さん。
食堂スペースには人が集まり
情報交換をしたり、髙野さんにいろいろと話を聞いたり。
宿を利用する人にはダイビング計画も提出してもらうので
ポイントや時間も把握。
さらに、大瀬が盛り上がるようにと
イベントの企画などにも携わっている。
準備はとても大変だし、プレッシャーもある。
それでもする。
「みんなが楽しんでくれているからいっかな」
さらりと言うこの言葉には髙野さんの大瀬の海に対する愛情が感じられた。
水質が良いのはなにか秘訣。
大瀬がたまたま地形的に良かった。
何もしなくても日本一になった。という。
だが、この資源を活かす人たちがいて
安心して私たちは海に入ることができる。
大瀬の海をめいいっぱい楽しみ
大切にすることが海に関わる方たちへの恩返しのような気がした。
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ダイビングの情報は現地や、沼津の街中ではLot.nでも入手することができる。
【現地への行き方】
○沼津駅南口から直通バス
(■1日2往復・沼津発6:41・16:25 ■大瀬発8:20・18:02)
○東京~沼津I.C(1時間20分)~大瀬崎(50分)
≪フジミ≫
〒4410-0244 沼津市西浦江梨993
tel:055-942-3052