研いて沼津の食を支える

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町方町はアーケード名店街にある正秀刃物店。
ここには水産加工業や飲食店など沼津の食を支える道具がある。
オーソドックスな出刃や牛刀から刺身包丁、アジの開き包丁まで刃物に関してならすべておまかせだ。
この日も持ち込まれる刃物のメンテナンスで大忙しのご主人、大野隆久さんに訊いた。

●以前、マルハチ金龍丸水産に取材に伺ったとき、大野さんの話になったんです。
開き包丁ひとつにしても工夫を重ねてできていると。
「沼津型の開き包丁って薄いのよ。出刃包丁だと厚いから魚への入りが悪いわけ。
で、回転式の機械で研ぐものだから幅が広くなる」

●いつぐらいから今の形になったんですか?
「40~50年前かな?もともとはカネトモさん(西島町)のオヤジが、
うちのオヤジに作ってみろといったのがはじまり。開き包丁ってフラットじゃなくてすいてあるの。
片刃の包丁っていうのはそうなんだけど。空気が入って、身離れがよくって、切り口が光るの」

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●開き包丁のメンテナンスはどれぐらいのペースでおこなうんですか?
「干物屋さんは毎日さ。切る枚数によっても違ってくるけどね。
詳しいことは使う人、金龍丸さんに聞いて(笑)
でも、金龍丸さんの場合は一番いい状態で刃を使ってくれていると思う。
あとは獅子浜のかね中冷蔵庫さんもうまく研いでいると思う」

●開き包丁を買っていく一般のお客さんもいると聞いたんですが……
「そうだね。素人の人で開きたいっていうお客さんも来るね」

●素人が開くときのコツはありますか?
「う~ん、干物屋さんは抉らないから刃が欠けないわけ。
素人の人はこじっちゃうから刃が欠けちゃう。だから、素人の方には無理せず出刃包丁を勧めるな」

●正秀さんのお客さんには料理人さんもいらっしゃいますよね?
「うん、多いよ。メンテナンスがほとんどだけど、錆や刃欠け、ハンドル修理とかいろいろあるからね。
研ぎに関して言えば多い月には500本にもなるよ」

●500本!すごいですね!そういったことに対処する刃物屋さんが沼津には何軒あるんですか?
「今はうちだけ。金物屋さんはあるけど、刃物屋としてはうちだけだね」

●そうなんですか!大野さんから見て、沼津の街は変わりましたか?
「このアーケード名店街に関していえば変わってないかな。
僕が30年位前に東京から帰ってきたとき、ここにはもう人通りがなかった(笑)」

●アーケード名店街は個性的なお店が多くて面白いですけどね……
「ここはみなさんキャラクターを持った商売をやっている。
うちは研ぐことだし、電気堂さんはアンティークのオーディオに絞り込んでる。
水口園さんも老舗のお茶屋さんとしてやってる。そうやってある部分に特化して商売しているの」

●なるほど、でないと生き残れないと。
「そう、この商店街に来てもらうためには努力をしないとね。
だから、お客様を大事にして商売してるの。何事もそうやって続けることだよね」

包丁一つにしてもそこには工夫がある。創意工夫が沼津の干物を支え、食文化を支える。
古きよきものを愛し、長く使い続けることに価値を見出す大野さん。
何度も修理され長年使われた刃物から、物を大事にすること、そして“続ける”ことの尊さを学んだ。

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